お知らせ
[環境社会共生体]長良川研究の研究成果について
漁業・釣りの対象として、また翌年の野生アユ集団にとって極めて重要なアユ産卵親魚(落ちアユ)。この親魚たちは、秋の産卵期になると下流の産卵場を目指して、広い流域のどこからともなく川を下って集まってきます。古来より知られたこのアユの習性。しかし、彼らが流域のどこで成長し、どこからやってきたのか、これまで誰も知ることはできませんでした。
このたび、岐阜大学環境社会共生体研究センターの永山滋也特任助教(2025年4月より長野大学共創情報科学部設置準備室 准教授)と原田守啓センター長は、富山大学学術研究部理学系の太田民久講師、岐阜県水産研究所の藤井亮吏氏、東京大学大学院理学系研究科の飯塚毅准教授と共同研究を行い、長良川漁師の協力で得たアユの耳石を分析し、長年のミステリーであったアユ産卵親魚の流域内生息場利用履歴を解明するとともに、その利用パターンが孵化のタイミングに関係していることを突き止めました。
本研究の成果は、地球温暖化が進行する現在から将来における森林の地球環境調節機能の診断や、気候変動の影響を予測する手法の精度向上など、持続可能な社会の構築に資する自然生態系に関する知見となります。
本研究は、現地時間2025年5月28日に、Springer Nature社から『Scientific Reports』に原著論文として掲載されました。
本研究のポイント
・下流の産卵場に集結した長良川のアユ親魚が、いつ生まれ、いつ川にのぼり、流域のどこで成長したのかという生涯履歴を読み解くことに初めて成功しました。
・孵化のタイミング(秋)によって、川にのぼるタイミング(春)が決まり、それがさらに、流域のどこで成長期(夏~秋)を過ごすのかにも関係していることを突き止めました。
・長年のアユ生態のミステリーを解明しました。これにより、河川環境整備やアユ資源管理方策への貢献が期待されます。